脳血管の異常で突然手足の麻痺や、言葉の障害が起こったり、意識をなくして倒れたりする発作が、脳卒中と呼ばれます。しかし、脳の血管の異常は、常に脳卒中発作という形で現れる分けでは有りません。
 上出脳神経外科クリニックで診させ頂きたい、この様なことがあったら、要注意という状況(脳の精密検査をして頂かなければならない症状)を列挙します。
*急に起こった半身の麻痺(力が入らない)、知覚障害(しびれ感)、言葉の異常(ろれつが回らない、言葉がしゃべれない、言葉が理解できない)、*急に起こった視力・視野の異常、*急に起こった強い後頭部痛、*家族に脳卒中、特にくも膜下出血の患者がいる

 突然半身の力がなくなったり、しびれが出たり、言葉が出なくなるものの、数分で症状が嘘のようになくなる発作です。一時的に脳の血液の流れが障害されて発生します。
*不整脈(心房細動)が原因で心臓に出来た血栓が剥がれおり、血流に乗って脳の血管に到達し、一時的に閉塞する場合。
*頚部の動脈に異常狭窄が起こり、そこに血栓が出来、これが剥がれおり、血流に乗って脳の血管に到達し、一時的に閉塞する場合。
*脳の血管そのものが動脈効果で細くなり、一時的に血流障害が起こった場合。
 良くなったからと放置しては行けません。脳梗塞の前兆で、繰り返すと重大な後遺症を残す脳梗塞になってしまう発作なのです。すぐに脳神経外科の専門医で、脳、頚部血管の精密検査、必要に応じて心臓の検査を受けて下さい。

 一過性脳虚血発作の一種です。突然に片方の視界が真っ暗になり、何も見えなくなってしまう発作です。脳の視覚中枢(後頭葉)にも一時的なの血流障害が起こることが有りますが、その時には両方の目とも右か左の半分だけが、白いカーテンがかかったようになってしまいます。同じ側の、多くは、頸動脈に出来た血栓が剥がれ、一時的に眼球/網膜の栄養血管(眼動脈)を閉塞することに起こる症状です。
 この状態も放置しては行けません。脳梗塞の前兆ですので、すぐに精密検査を受けて、必要な治療を開始する必要が有ります。

 何の誘因もなく、急に片方の後頭部に激痛が走った場合は要注意です。耳介の後下部を走行する椎骨動脈という脳の血管壁の一部が解離(血管の壁に裂け目が出来て、剥がれる現象)することで激痛が走ります。めまいや顔面/体の知覚異常や筋力の低下がおこれば、救急車で専門病院ということを躊躇される方は少ないでしょうが。しかし、頭痛だけの時には、肩こり頭痛や後頭部の神経痛(大後頭神経痛)などと間違われることがあるのです。
 高血圧をお持ちの方は、血管壁への負荷がかかっているということで、この様な強い頭痛が起こった場合は、すぐに精密検査を受けることです。頭部CT検査で脳出血/くも膜下出血がないと分かっても安心できません。この様な場合は、MR検査で、詳細な脳血管の検査(MRA検査)を受ける必要が有るのです。

 

 脳動脈瘤は、破裂しくも膜下出血を起こすと、死を意識するほどの激しい頭痛に突然襲われます。強い吐き気と嘔吐を伴い、一時的に意識がなくなる方もいらっしゃいます。ほとんど、救急車で専門病医院に運ばれる状況になりますが、適切な治療を受けても、半分近くの方が命を起こすことになるのです。
 注目しなくては行けないのは、脳動脈瘤をお持ちの方が、破裂前に軽い風邪を引いた様な頭痛を感じることが多いことです。また、動脈瘤が出来る場所によっては片方の瞼が下がったり、物が二重に見えたりという現象が起こることが有ります(内頸動脈瘤/動眼神経麻痺)。
 親兄弟に脳動脈瘤、くも膜下出血の患者さんがいらっしゃる方で、ちょっと気になる頭痛などがある場合は、ぜひ一度脳の血管の精密検査を受けて下さい。検査さえ受けて頂ければ、破裂の危険が高い様な大きさの動脈瘤は破裂前に発見し、必要に応じて予防的手術を受けて頂くことが出来るのです。

 我が国に多い、原因不明の病気で、脳の血管が本幹部の太いところで徐々に狭窄、閉塞してくる、一部の方は遺伝的要因が証明されている疾患です。
 子供の頃に運動や息が弾む様な行動を取った際に、一過性脳虚血発作を起こすこと、思春期に頭痛やめまいを訴えること、結婚や出産する時期に合わせて脳出血を起こして発見されることが有ります。
 家系内に若いうちに脳卒中を起こした方がいたり、子供の頃に気になる症状があったり、思春期に繰り返し頭痛やめまいに悩まされているかたは、ぜひ一度MRA検査を受けて下さい。脳血管の直接的検査をしないと、異常が発見できないことが有りますので、要注意です。